不惑草紙

編集者、ライター。紙とネット、リアルとバーチャルを行き来する日々のあれこれ。

リアルの強み

 

先日、夜までに名刺を手に入れる必要に迫られた。ネットで名刺、印刷、即日と検索してみた。検索上位にはぎょろ目の俳優、遠藤賢一がCMに出てくるラクスル。高すぎる、100枚9140円って何だよ。類似のサイトでも3000円以上する。

 

あちこち探してみたが、ネットで注文するオンデマンド印刷系は総じて高い。しかも即日といいながら、配達は翌日だったりして話にならない。そこで、夜のイベントが渋谷だったので、周辺の印刷屋を探してみた。すると代々木に一つあった。しかもモノクロが50枚たったの千円。しかも事務所で直接受け取れる。

 

代々木の印刷屋に電話してみた。「今日中に名刺を受け取りたいんですけど、間に合いますか」。「今13時過ぎてるので、特急扱いで500円追加になりますが」ー それでも1500円で最安だ。結局見栄えを考えてカラーにして、2000円プラス消費税。

 

ウェブサイトのテンプレートからデザインと色を選んで、必要事項を入力。1時間ちょっとで名刺が出来上がったとのメールが来た。しかも夜19時までに取りに行けばいいという。

 

印刷屋は代々木駅から歩いて5分ほどのマンションの一室で、インターホンを押すとすぐに名刺を持って出てきてくれた。

 

最近はやりのオンデマンド印刷サービスは自ら印刷所を持たず、複数の印刷屋の空き時間を使うため印刷コストが抑えられる反面、受付と印刷、配送が別々でスピード対応に向かない。

 

小規模な印刷屋は注文の受付も印刷も自前、客に品物を取りに来てもらえば配送料もかからない。こうしたリアルの印刷屋もネットを使いこなせれば、商機が増える。それなのに多くが集客を自らしないで、下請けになってしまっているのは残念だ。

 

 

 

 

 

異業種交流の利用法

自分で運営しているサイトの周知とパートナー探しのため、ニュースサイトが主催するトークイベントにちょくちょく顔を出している。テーマにもよるが参加者のタイプがいくつかに分類される。

 

半数ぐらいが学生か社会人になりたて風の、ネットやリアルでいろいろな人とつながりたい系の好奇心旺盛な男女。というより女子が多い。3、4割が意識高い系のビジネスパーソン。こちらは男女ほぼ同数。で残りの1、2割が自分のような一見何を生業としているのか分からないようなおっさんだ。

 

この手のイベントは大概、起業家だとか建築家だとかデザイナー、ウェブでブイブイいわせているブロガーやメディア運営者などが参加。特徴はそれぞれが自分の実体験などを交えつつ、ためになりそうな話をするのだが、話が深まらない。名刺交換だけが目的の自分にとって、トークショーは前座に過ぎない。

 

懇親会で困るのが、学生ベンチャー風の勢いありそうな若者や意識高い系が積極的に話しかけてくることだ。目当ては自分と同じように独自でビジネスを始めたような人やウェブ関係の人間なので、時間をムダにしたくない。

 

そこで、最近は自分からビジネスに繋がりのありそうなにおいのする人を見つけて自分から話しかけるようにしている。先手必勝。たまにヘアデザイナーさんとか獣医師さんとか予想外の人に当たったりするが、それはご愛敬。最近はお目当ての人に的中する確率が上がってきた。

 

異業種交流会の場を人を見抜く鍛錬の場と考えると、なかなか面白い。

 

 

 

 

 

スランプについて

 

ライフハッカー日本版で、「どんなスランプからも脱却する13の方法」という記事のタイトルを見つけて、首をかしげてしまった。天の邪鬼な性格のためか、「何々するための10カ条」とか、「なんとかになる10の方法」といった類のネタはほぼスルー。

 

「どんなスランプからも脱却する13の方法」に至っては、全く興味がそそられない。

 

そもそも、スランプに陥っている奴ってどこにいるんだよっ。ん、ちょっと待てよ。

 

「あー、今スランプ」

 

職場や飲み会、友人との茶飲み話、ツイッター、ブログなどでこうアピールする人がたまにいる。

 

自分も、「今日はブログで何書こうかなー」とか、「パソコンに向かうのが億劫だなー」と思うことがたまにある。けれども、これをスランプと言うだろうか?

 

単純に面倒くさい、やる気が出ないだけだ。恐らく。

 

なので、今まで周りに「俺は今スランプだ」なんて言いふらしたことはない。ただ単にやるべき事から逃げたいだけなのだ。それをスランプという言葉を隠れ蓑にして言い訳をしたくはない。

 

スランプという言葉を使ってよいのは、一流のスポーツ選手や著名な作家くらいだろう。イチロー村上春樹みたいな超有名人が、スランプについて語るなら説得力がありそうだ。

 

つまるところ、凡人にとってスランプから脱出する方法を知る必要は無さそうだ。

 

 

 

中年のヒーロー

 

唐沢寿明主演の「イン・ザ・ヒーロー」という映画を観た。映画やドラマなどでヒーローのスーツを着てスタントするスーツアクターが主人公の作品。素顔をさらす俳優とは違い、決して一般には知られない裏方だ。福士蒼汰が扮する若手人気イケメン俳優との交流を通じ、物語は進んでいく。

 

一見ノーテンキな夢追い人に見える主人公は、自分を見下した感じの若手イケメン俳優に対し、臆することなく、かといって威張るわけでもなく接する。もちろん説教オヤジでもない。


中年サラリーマンになぞらえるならば、会社では存在も知られないような部署で黙々と作業をこなしてきたベテラン技術職と、海外でMBAを取得した英語ペラペラのイケメン若手社員の交流といったところか。


自分の仕事に誇りを持ちつつ、日々精進する。周りには自然体で接し、教えを乞う若者に対しては惜しみなく自身の経験やノウハウを伝える。時には共に汗を流す。格好いいではないか。

 

「映画の世界だから」と一蹴することなかれ。夢を売るのも映画の役割の一つだ。中年のリアルヒーローを見事に描ききった作品で、久々にすがすがしい気分になれた。

 

スタントなどアクションシーンも見応えあり。友情出演した松方弘樹の殺陣はさすが。エンドロールで流れる主題歌はどこぞのアニソンの歌手の曲かと思ったら、その昔一世を風靡したあの有名ロック歌手のもの。おじさん世代にとっては最後までしびれさせてくれる仕掛けが満載だった。

 

 

 

 

Amazon・Kindleとブックオフ

 

Amazonで古本が安価で買えるようになって久しい。そこへきて最近は紙の本と同じ内容の電子書籍「Kindle本」までセールを始めた。Kindle本は製本代や流通コストがかからないため、通常は紙の本より安い。それが最大60%以上オフになるという。

 

このKindle本のセール。Amazonと出版社が組んでやるのだから、とうとうここまで来たか、という感じだ。再販制危うし。例えば角川書店が安売りフェアを期間限定でやっている。

 

タイトルとKindle価格(カッコ内は紙の本との比較)の一例を挙げると

 

新訳 道は開ける            648円(17%OFF)

アルゴリズムが世界を支配する      840円(51%OFF)

私の奴隷になりなさい 檀密写真集 濃密 1755円(46%OFF)

 

カーネギーの「道は開ける」は古典の部類で紙の本はもともと安いので割り引き率が小さいのだろう。檀密の写真集は約半額で、電子版特典付き。好みの問題があるのであえて論評は避ける。

 

新しい本が半額程度で買えるとなると、新刊を2、3割引きで売っているブックオフなどの古本屋にとっては脅威となるだろう。もちろんセールをやるのは電子書籍で期間限定、出版社も限られている。

 

電子書籍が普及しセールが広まると、新刊本をブックオフで買っていた人が電子書籍に流れるかも知れない。私はブックオフをよく利用するが、Kindle本の安売りで欲しい本が安く売られていたら買ってみたい。

 

神保町や商店街の片隅にたたずむ、珍しい本を置いた古本屋以外は、数年もすれば姿を消すかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

地元に突如現れた行列のできるたい焼き屋

 

最寄り駅から家まではほぼ一本道で、駅からつらなる商店街のどん詰まりから少し脇に入ったところにある。先週、その商店街の駅から遠い所にたい焼き屋ができた。開業から数日目だというのに、人だかりができている。

 

そのたい焼き屋というのが、都内でよく見かける銀だこ、一口茶屋といったチェーンではない。隣駅近くの商店街などでも見かけたことのある、地域展開の店だ。ドミナント展開というやつだ。

 

おとといもその店の前を通り過ぎた。相変わらず人だかりだ。すると数十メートル先のパン屋のおばさんが店先から出てきて、「まだ行列ができてるわね」と忌々しそうに一人ごとをぽつり。たいやきもパンも同じ小麦粉を使っているうえに甘いものが多いので、客を取られるとでも思っているのか。

 

考えてみると駅周辺でたい焼きを売っている店はない。少なくとも駅を降りて家にたどり着く間には一軒もない。しかも商店街の向こうは数キロメートル四方にわたる住宅街だ。学校もいくつか近くにある。駅から7、8分歩いてきて商店街があと数十メートルで終わる、というところでのたい焼き屋。

 

夕方だったら小腹もすいてきて、つい甘い物に手が出てしまう。マーケティング的に考え尽くした上での出店だとすればたいしたものだ。

 

この店がいつまで繁盛するのか、定点観測を続けてみたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そろそろマラソンとかやめない?

 

最初に言っておくが、スポーツは観るのもやるのも好きだ。子供の頃は遊びといえば野球かサッカー、中学の部活はバスケット。高校から始めたラグビーにはまり、クラブ活動ではあるが数年前まで20年以上続けてきた。

 

そこで一定の結論に達した。スポーツをガチでやると体を壊す。これは草野球でも市民ランナーでも同じ。ケガをしやすくなるし、膝だとか腰だとかあちこち痛くなってくる。マラソンの42.195キロなんて誰が決めたか知らないが、人間が数時間で走る距離としては過酷すぎる。

 

ただ自分自身も40歳を目前にして、「一度はマラソンを完走してみたいな。できれば4時間以内で」と思ったことがある。

 

理由はこうだ

 

肉体的にも精神的にも自分がまだまだイケてることを証明したい

でそれをフェイスブックなんかにアップして、周りの人に自慢したい

 フルマラソンの完走で自分自身が変われる期待感(そんなことで人は変われない)

達成感を味わいたい

アイドルとかスポーツやってなかった人とかが完走してるんだから、俺も楽勝だろ

 

結局、自分のためというより、「楽勝だったぜ」、「初マラソンで4時間切ったぜ」とか言って、周りに認められたいだけだと気付いてやめた。

 

純粋に競技としてマラソンやトライアスロンに打ち込んでいる人にとやかく言うつもりはない。だけど自己承認欲求を満たすためだったら、もっと体に負荷のかからないことでもやった方が良いんじゃないかと思う。円周率をとんでもないケタまで暗唱できるとか、けん玉の凄い技ができるとか…

 

とにかく、SNSとかテレビで素人がマラソン走ってる姿を映してああだこうだと言っているのには飽きてきた。