不惑草紙

編集者、ライター。紙とネット、リアルとバーチャルを行き来する日々のあれこれ。

カタカナ英語を漢字一文字に変換して分かったこと

 

パーティのテーブルに載せられたオードブルが最近、おしゃれになってきた。ミートボールやピンチョス、フルーツの生ハム巻きなどを刺している爪楊枝のようなアレ。カラフルなプラスチック製で、つかむ方の先端が動物を模したデザインになっていたりする。中にはトマトのヘタの形をした楊枝状のピンまである。商品名は「ヘタツキ」と「ヘタヨウジ」。

 

beauty.yahoo.co.jp

 

名前は結局のところ、「ヨウジ」なのか?。いや、ヨウジだと歯の間に詰まった食べかすをシーシー言いながらほじくる親父を想起させる。サーベル、ピン、ピック、どの呼び方もしっくりこない。いろいろ調べてみたが、正式な呼び名はないらしい。強いて言えば「フードピック」か。

 

 

通販サイトなどを見ていると、このネーミングが使われている。恐らくアイスピック[ice pick]のピックと同じ使われ方だろう。ただ、女子たちの間で「このフードピックかわいくない?」「うわー このピックヤバい♡」などという会話が交わされている場面に出くわしたことはない。

 

 

自分なりに考えた結論は、短めの串である。そう「串」! 文字を見たら一目瞭然、これが象形文字を源流とする漢字の素晴らしさ。ちゃんとモノがくし刺しにされた様を表しているではないか。

 


飲食関係に従事している方々には、ぜひ「オードブル串」「ピンチョス串」「スイーツ串」などと、「串」を付けて呼ぶことを強く推奨したい。

 


蛇足になるけれど、米国のジャレド・ダイアモンドという生理学や進化生物学などの専門家が「銃・病原菌・鉄」という著書で、日本人が便利なアルファベットやカナ文字ではなく、漢字を好んで使うのは漢字のステータスが高いからだと分析している。

 

しかしこれは的外れな指摘。

 

 串という漢字を見ただけで、日本人は焼き鳥、みたらし団子、牛すじ、ピンチョスなど瞬時に大量の画像イメージを思い浮かべることができる。これがアルファベットのAだったらどうだろうか。頭文字にしている名前や企業のロゴくらいしか思い浮かばないだろう。我々は漢字を一目読んだだけで、瞬時に無限の想像を巡らせることができる。しかも画像や音声、匂いまで再現する。漢字を母国語に取り入れている民族が手にしている特権でもある。

 

 

漢字はステータスでもなければ、ただの道具でもない。漢字を読み書きすることは我々の思考そのもの。もっと大事にしていきたい。